adhara’s blog

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水素様原子における量子力学版Laplace-Runge-Lenzベクトル(その1)〜 ハミルトニアンと可換であること 〜

数回に分けて、水素様原子に対する(非相対論的)束縛状態エネルギースペクトル
 {\displaystyle
E_n = - \frac{1}{2n^2}\frac{m_e}{\hbar^2}\left(\frac{Ze^2}{4\pi\epsilon_0} \right)^2
}
を求めるための7通りの解法を紹介する予定である。

  1. E. Schrödingerによる波動方程式解法(ラゲール陪多項式を用いる)
  2. W. Pauliによるso(4)代数を用いる解法
  3. su(1,1)代数を用いた解法
  4. 因数分解を用いた解法
  5. V. Fockによる運動量表示を用いた解法
  6. E. Schrödinger、P. S. Epstein、I. Wallerらによる波動方程式解法(放物線座標表示の解)
  7. 経路積分を用いる方法

本記事では、その2のPauliによるso(4)代数を用いる解法を紹介するための準備を行う。
すなわち、量子力学Laplace-Runge-Lenz(LRL)ベクトルの導入を行う。
この物理量は水素様原子に対するハミルトニアン下での保存量となっており、Pauliの解法を進める上で重要な働きをする。
元々、古典力学ではクーロンポテンシャルによって運動する物体において、LRLベクトルというものが保存されることが知られていた。
量子力学においても対応する物理量が存在しており、やはり保存量となる。
これらの事情についてはSchiffの本ウィキペディアの記事が詳しい。
これらの文献に従って歴史的経緯を簡単に記すと、LaplaceやRungeは古典力学におけるLRLベクトルを考えており、Lenzが量子力学版を導入したとのことである。
Lenzのアイディアを有効活用したのがPauliであり、このことをもって量子力学版をLenz-Pauliベクトルという場合もある。
また、LaplaceやRungeは最初の導入者ではなく、HermannやBeroulliである、とのことである。


まとめ

量子力学Laplace-Runge-Lenzベクトルが水素様原子において保存量となっていることを示した。
今後、このベクトルを使ってPauliによる行列代数解法を展開する。

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