水素様原子における量子力学版Laplace-Runge-Lenzベクトル(その2)〜 直交性等 〜

数回に分けて、水素様原子に対する(非相対論的)束縛状態エネルギースペクトル
 {\displaystyle
E_n = - \frac{1}{2n^2}\frac{m_e}{\hbar^2}\left(\frac{Ze^2}{4\pi\epsilon_0} \right)^2
}
を求めるための7通りの解法を紹介する予定である。

  1. E. Schrödingerによる波動方程式解法(ラゲール陪多項式を用いる)
  2. W. Pauliによるso(4)代数を用いる解法
  3. su(1,1)代数を用いた解法
  4. 因数分解を用いた解法
  5. V. Fockによる運動量表示を用いた解法
  6. E. Schrödinger、P. S. Epstein、I. Wallerらによる波動方程式解法(放物線座標表示の解)
  7. 経路積分を用いる方法

本記事では、その2のPauliによるso(4)代数を用いる解法を紹介するための準備を行う。
以前の記事では、量子力学Laplace-Runge-Lenz(LRL)ベクトルの導入を行った。
本記事では、量子力学版LRLベクトルに関する重要な関係式をいくつか示す。

一つ目はLRLベクトルと角運動量ベクトルの直交性
{\displaystyle
\vec M \cdot \vec L = \vec L \cdot \vec M = 0
}
である。

二つ目はLRLベクトルの自乗の演算子に関する関係式
{\displaystyle
M^2 = \frac{2}{m_e}\left(L^2+\hbar^2\right)H+ \kappa^2
}
である。
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まとめ

本記事では、

  1. Laplace-Runge-Lenzベクトルと角運動量ベクトルが直交すること
  2. Laplace-Runge-Lenzベクトルの自乗の演算子角運動量ベクトルとハミルトニアン自体を用いた簡単な形で書けること

を示した。
以後の記事でPauliによるso(4)代数を用いた解法を紹介するが、そのためには角運動量ベクトルと(規格化した)Laplace-Runge-Lenzベクトルがso(4)代数の基底となっていることを示す必要がある。

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