【図解】su(1,1)代数を用いた水素様原子エネルギースペクトル解法について

本記事では、su(1,1)代数を用いた水素様原子に対するエネルギースペクトル解法の図解を行う。
上記解法の詳細については以前の記事、
adhara.hatenadiary.jp
を参照して欲しい。

本記事を書くにあたり、国場敦夫の記事A. E. McCoy and M. A. Caprioの論文を参考にした。

su(1,1)代数は異なるエネルギーの固有状態を結びつける働きをする。
とくに同代数で出てくる昇降演算子のうちの上昇演算子はエネルギーを高い状態を次々と「生成する」働きをする。
このような点に注目してsu(1,1)代数を「スペクトル生成代数」(国場の記事より)と呼ぶこともある。
これは一次元調和振動子の問題を昇降演算子で解く方法と似ている。
一次元調和振動子の場合も基底状態に対して上昇演算子を作用させることで高いエネルギーの固有状態を得ることが出来る。

このように上昇演算子はエネルギーを励起する働きを持っているのだが、この事象を場の理論ではボース粒子の生成と見なし、上昇演算子を生成演算子と呼ぶ。
一次元調和振動子の場合(あるいは三次元に拡張したものも含む)はボース粒子はフォノンと呼ばれ、物性理論等で重要な働きをする。

スライドの構成は、1〜4枚目が解法の簡単なレビュー、5〜6枚目が解法の図解である。
【考察/解釈】su(1,1)代数解法.pdf - Google ドライブ


まとめ

本記事では、su(1,1)代数を用いた水素様原子に対するエネルギースペクトル解法の図解を行った。
角運動量量子数が同じ固有状態はsu(1,1)×so(3)代数の既約表現に属することがポイントだと考えられる。
so(3)は球対称性ポテンシャルであることから来る対称性を表現するリー代数である。

一方で、su(1,1)代数による解法では異なる角運動量量子数の固有状態間の関係を理解するには不十分である。
角運動量量子数が異なる固有状態間の縮退(しばしば偶然縮退と呼ばれる)の原因となる対称性が見えてこないからである。
これについては、so(4)代数(Pauliの方法)またはSO(4)群(Fockの方法)を用いた理解が必要である。

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