水素原子束縛状態におけるSO(4,2)群構造

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ではJordan-Schwingerのボソン生成演算子を用いたSU(2)のユニタリ表現の応用例として、水素原子の束縛状態の波動関数を表示できることを示した。

本記事ではボソン演算子を用いてso(4,2)代数の構築ができることを示す。
水素原子の全束縛状態からなるヒルベルト空間全体が既約部分空間となるような表現をもつリー代数を構成することを意味する。

記事の構成は以下のようになっている。

  1. はじめに(問題設定等)
  2. スペクトル生成演算子
  3. SO(4,2)群so(4,2)代数
  4. so(4,2)代数の構築

水素原子の波動関数とSO(4,2)群の代数構造.pdf - Google ドライブ


まとめ

本記事では、水素原子の波動関数を表示するための四組のボソン生成消滅演算子を用いて、対称性を生成する演算子(角運動量とLRLベクトル)とスペクトル生成演算子とエネルギー指標演算子というものを構成でき、これらがso(4,2)代数の基底となることを示した。
今回の結果は四組の生成消滅ボソン演算子から構成されるハイゼンベルク代数の中に部分リー代数としてso(4,2)代数を構成した、ということである。

今後の展望

今回の記事を受けてSO(4,2)群やso(4,2)代数の性質に関する記事、座標を用いた具体的な生成元の表示方法、について書くことを考えている。

もう一つ興味深い数理物理的構造として、水素原子と四次元調和振動子の対応関係がある。
水素原子も四次元の調和振動子もその束縛状態を四種類のボソン生成演算子を用いて表示できる。
この関係性に着目して水素原子の問題を四次元の調和振動子の問題に置き換えることができる。
この置き換えの数学的手続きをKustaanheimo-Stiefel変換と呼ぶが、この変換は水素原子の問題を経路積分で解く際に用いられたり、一般コヒーレント状態という量子状態を構成するのに用いられたりする。
このあたりの話題も多くの数学的準備の記事と合わせて、書いていきたいと考えている。

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