adhara’s blog

数理物理に関する記事を書きます。 https://twitter.com/adhara_mathphys

共形変換代数so(4,2)

Minkowski空間 {\mathbb{R}^{1,3}} におけるMaxwell方程式はLorentz対称性に加えて共形対称性(conformal symmetry)をもつ。
本記事では共形対称性に対応する共形変換代数 { so(4,2) } について紹介する。

表記について

以下の議論ではEinsteinの縮約が使われる。
テンソルの上付き添え字は反変成分に、下付き添え字は共変成分に対応する。
ここで計量テンソル {\eta} を導入したが、これを行列として表示した場合に

{
\begin{eqnarray}
\eta 
&=& 
\begin{pmatrix}
{-}1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix} \\
&=&
\mathrm{diag}(-1,1,1,1)
\end{eqnarray}
}

となるように定義している。時間成分は第0成分、空間成分は第1,2,3成分とする。

また反変ベクトルに対して、{x^2}{x^\mu x_\mu=\eta_{\mu\nu}x^\mu x^\nu} を表すものとする。

ミンコフスキー距離を保つ微小な線形座標変換

微小な線形座標変換

{
\begin{eqnarray}
dx'^\nu = \Lambda^\nu{}_\mu dx^\mu = (\delta^\nu{}_\mu+L^\nu{}_\mu )dx^\mu 
\end{eqnarray}
}

について考える。
微小座標変換がミンコフスキー距離 {\eta_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu} を保つとは、

{
\begin{eqnarray}
\eta_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu 
= \eta_{\mu\nu}dx'^\mu dx'^\nu 
= \eta_{\mu\nu}\Lambda^\mu{}_\rho \Lambda^\nu{}_\sigma dx^\rho dx^\sigma
\end{eqnarray}
}

{O(L)} の範囲で成立することを言う。
このとき、右辺において {O(L^2)} となる項を無視すると、

{
\begin{eqnarray}
\eta_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu 
&=&
\eta_{\mu\nu}\Lambda^\mu{}_\rho \Lambda^\nu{}_\sigma dx^\rho dx^\sigma \\
&=&
(\eta_{\rho\sigma} + \eta_{\rho\nu}L^\nu{}_\sigma + \eta_{\mu\sigma}L^\mu{}_\rho ) dx^\rho dx^\sigma 
\end{eqnarray}
}

が成立する。
すなわち、

{
\begin{eqnarray}
&=&
(L_{\rho\sigma} + L_{\sigma\rho} )dx^\rho dx^\sigma = 0
\end{eqnarray}
}

が成立し、{L}が反対称テンソルであることすなわち、

{
L_{\rho\sigma} + L_{\sigma\rho} =0
}

を要請する。
ミンコフスキー距離を保つ微小な線形変換は、Minkowski空間における狭義回転すなわち狭義Lorentz変換に対応する。

狭義Lorentz変換リー代数 {so(3,1)\simeq sl(2, \mathbb{C})}

狭義回転演算子{ L} としたとき、これに期待される役割は {O(L)} の範囲で反対称テンソル {L^\rho{}_\mu }を用いて

{
\begin{eqnarray}
e^{-\mathrm{i}L} x^\rho e^{\mathrm{i} L} =  (\delta^\rho{}_\mu + L^\rho{}_\mu) x^\mu
\end{eqnarray}
}

と書けること、すなわち反対称テンソル {L^\rho{}_\mu }を用いて

{
\begin{eqnarray}
[ L , x^\rho ]=  \mathrm{i}L^\rho{}_\mu x^\mu 
\end{eqnarray}
}

と書けることである。
このとき、 { L} は、

{
\begin{eqnarray}
 L &=& \mathrm{i} x^\mu L^\nu{}_\mu\frac{\partial}{\partial x^\nu} \\
&=&
\mathrm{i} x_\mu L^{\nu\mu}\frac{\partial}{\partial x^\nu}\\
&=&
{-}\mathrm{i} x_\mu L^{\mu\nu}\frac{\partial}{\partial x^\nu}
\end{eqnarray}
}

と書ける。
ここで、狭義回転演算子

{
\begin{eqnarray}
{M}_{\mu\nu} 
&=& 
{-} \mathrm{i}\eta_{\mu\alpha}x^\alpha\frac{\partial}{\partial x^\nu} 
{+} \mathrm{i}\eta_{\nu\alpha}x^\alpha\frac{\partial}{\partial x^\mu} \\
&=&
{-} \mathrm{i}x_\mu\frac{\partial}{\partial x^\nu} 
{+} \mathrm{i}x_\nu\frac{\partial}{\partial x^\mu} 
\end{eqnarray}
}

を導入すると、

{
\begin{eqnarray}
 L 
&=&
{-}\mathrm{i} x_\mu L^{\mu\nu}\frac{\partial}{\partial x^\nu}\\
&=&
\frac12 L^{\mu\nu}
\left(
{-}\mathrm{i} x_\mu\frac{\partial}{\partial x^\nu}
{+}\mathrm{i} x_\nu \frac{\partial}{\partial x^\mu}
\right)
\\
&=&
\frac12 L^{\mu\nu} M_{\mu\nu}
\end{eqnarray}
}

が成立する。

ここで、{M_{\mu\nu}}同士の交換関係をリーブラケットと解釈すると、これらの演算子リー代数 {so(3,1)\simeq sl(2, \mathbb{C})} をなすことがわかる。
すなわち、

{
\begin{eqnarray}
[ M_{\mu\nu}, M_{\rho\sigma} ]
=   \mathrm{i} \eta_{\mu\rho}M_{\nu\sigma} 
{-} \mathrm{i} \eta_{\nu\rho}M_{\mu\sigma}
{-} \mathrm{i} \eta_{\mu\sigma}M_{\nu\rho}
{+} \mathrm{i} \eta_{\nu\sigma}M_{\mu\rho}
\end{eqnarray}
}

が成立する。
また、{M_{\mu\nu}} \ \ (\mu<\nu)は基底をなし、リー代数の次元は6であることもわかる。

並進演算子

Minkowski空間は並進対称性をもつ。
並進演算子{ P} としたとき、これに期待される役割は {O(\epsilon)} の範囲で

{
\begin{eqnarray}
e^{-\mathrm{i}P} x^\rho e^{\mathrm{i} P} =  x^\rho + \epsilon^\rho
\end{eqnarray}
}

と書けること、すなわち

{
\begin{eqnarray}
[ P , x^\rho ]=  \mathrm{i} \epsilon^\rho 
\end{eqnarray}
}

と書けることである。
このとき、 { P} は、

{
\begin{eqnarray}
P 
&=& \mathrm{i} \epsilon^\mu \frac{\partial}{\partial x^\mu} 
\end{eqnarray}
}

と書ける。
ここで、並進演算子

{
\begin{eqnarray}
{P}_{\mu} 
&=& 
\mathrm{i} \frac{\partial}{\partial x^\mu} 
\end{eqnarray}
}

を導入すると、

{
\begin{eqnarray}
P
&=& \epsilon^\mu P_\mu
\end{eqnarray}
}

と書ける。
明らかに

{
\begin{eqnarray}
\left[P_\mu,P_\nu \right] = 0
\end{eqnarray}
}

である。

Poincaré対称性とリー代数 {iso(3,1)}

並進演算子と狭義Lorentz変換演算子がなす代数はPoincaré代数と呼ばれ、Minkowski空間の対称性であるPoincaré対称性を記述する。
演算子の間では交換関係

{
\begin{eqnarray}
\left[M_{\mu\nu},P_\rho \right] = \mathrm{i}\eta_{\mu\rho}P_\nu - \mathrm{i}\eta_{\nu\rho}P_\mu
\end{eqnarray}
}

が成立する。
Poincaré代数はリー代数としては {iso(3,1)} と同型である。

Minkowski距離が0の場合にこれを保つ微小線形変換

再び微小な線形座標変換

{
\begin{eqnarray}
dx'^\nu = \Lambda^\nu{}_\mu dx^\mu = (\delta^\nu{}_\mu+L^\nu{}_\mu )dx^\mu 
\end{eqnarray}
}

について考える。
微小座標変換がミンコフスキー距離 {\eta_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu=0} を保つとは、

{
\begin{eqnarray}
\eta_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu 
= \eta_{\mu\nu}dx'^\mu dx'^\nu 
= \eta_{\mu\nu}\Lambda^\mu{}_\rho \Lambda^\nu{}_\sigma dx^\rho dx^\sigma
=0
\end{eqnarray}
}

{O(L)} の範囲で成立することを言う。
このとき、狭義Lorentz変換に対応する微小線形変換に限らず、


{
L_{\rho\sigma} \propto \eta_{\rho\sigma}
}

のときも成立する。
これは計量を定数倍するものであり、スケール変換あるいは伸長変換(dilation)に対応するものである。

伸長演算子

座標を  {(1+\epsilon)} 倍する伸長演算子{ D(1+\epsilon)} としたとき、これに期待される役割は {O(\epsilon)} の範囲で

{
\begin{eqnarray}
e^{-\mathrm{i}D(1+\epsilon)} x^\rho e^{\mathrm{i} D(1+\epsilon)} =  (1+\epsilon) x^\rho 
\end{eqnarray}
}

と書けること、すなわち

{
\begin{eqnarray}
[ D(1+\epsilon) , x^\rho ]=  \mathrm{i} \epsilon x^\rho 
\end{eqnarray}
}

と書けることである。
すなわち、伸長演算子

{
\begin{eqnarray}
D
=\mathrm{i}   x^\mu\frac{\partial}{\partial x^\mu}
\end{eqnarray}
}

を導入して、

{
\begin{eqnarray}
D(1+\epsilon)
= \epsilon D
\end{eqnarray}
}

と書ける。
伸長演算子とPoincaré代数を合わせたリー代数においては、次の交換関係が成立する。

{
\begin{eqnarray}
[ D , M_{\mu\nu} ] =0
\end{eqnarray}
}

{
\begin{eqnarray}
[ D , P_{\mu} ] = -\mathrm{i}P_\mu
\end{eqnarray}
}

このリー代数はスケール不変性を保つ理論について議論する際に必要となる。

反転演算子

反転変換(inversion)あるいは反転演算子という概念を導入する。
共形対称性を保つ理論を考える際には必須となる演算子である。
離散変換

{
I : x^\nu \mapsto \frac{x^\nu}{x^2}
}

を反転変換と呼び、対応する演算子を反転演算子と呼ぶ。
反転演算子

{
\begin{eqnarray}
I^2 = 1
\end{eqnarray}
}

となる性質を持つ。
また、{y=Ix} とした時に座標変換のヤコビアン

{
\begin{eqnarray}
 \frac{\partial y^\nu}{\partial x^\mu}
= \frac{1}{x^2}\left( \delta^\nu_\mu - \frac{2x^\nu x_\mu}{x^2}\right)
\end{eqnarray}
}

である。

伸長演算子と反転演算子の関係

次の式が成立する。

{
\begin{eqnarray}
IDI = -D
\end{eqnarray}
}

この式は、{y=Ix} とした時に、

{
\begin{eqnarray}
DIf(x) 
&=&
 \mathrm{i}x^\mu \frac{\partial}{\partial x^\mu} f(y)\\
&=&
 \mathrm{i}x^\mu \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y) \frac{\partial y^\nu}{\partial x^\mu}\\
&=&
 \mathrm{i}x^\mu \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y) \frac{1}{x^2}\left( \delta^\nu_\mu - \frac{2x^\nu x_\mu}{x^2}\right)\\
&=&
{-} \mathrm{i} \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y) \frac{x^\nu}{x^2}\\
&=&
{-} \mathrm{i} \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y) y^\nu
\end{eqnarray}
}

が成立し、

{
\begin{eqnarray}
IDIf(x) 
&=&
{-} \mathrm{i} I(y^\nu \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y)) \\
&=&
{-} \mathrm{i} x^\nu \frac{\partial f}{\partial x^\nu}(x)\\
&=&
{-}Df(x)
\end{eqnarray}
}

となる。二つ目の等号では {Iy=x} を用いている。

特殊共形変換演算子

反転演算子 {I} は原点の変換について特異的な性質を持っており、扱いやすいものではない。
ところが {K_\mu = IP_\mu I} のような演算子を考えると、これは特異性を持たない。
この演算子を特殊共形変換演算子と呼ぶ。
この演算子を求めよう。
まず、

{
\begin{eqnarray}
P_\mu If(x) 
&=&
 \mathrm{i} \frac{\partial}{\partial x^\mu} f(y)\\
&=&
 \mathrm{i} \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y) \frac{\partial y^\nu}{\partial x^\mu}\\
&=&
 \mathrm{i} \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y) \frac{1}{x^2}\left( \delta^\nu_\mu - \frac{2x^\nu x_\mu}{x^2}\right) \\
&=&
 \mathrm{i} \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y) \frac{1}{x^2}\left( \delta^\nu_\mu - 2y^\nu x_\mu\right) \\
\end{eqnarray}
}

となる。
ここで { Ix^2 = \frac{1}{x^2}} を用いると、

{
\begin{eqnarray}
IP_\mu If(x) 
&=&
 \mathrm{i} \frac{\partial f}{\partial x^\nu}(x) x^2\left( \delta^\nu_\mu - 2x^\nu y_\mu\right) \\
&=&
 \mathrm{i} \frac{\partial f}{\partial x^\nu}(x) \left(x^2 \delta^\nu_\mu - 2x^\nu x_\mu\right) 
\end{eqnarray}
}

となる。
すなわち、

{
\begin{eqnarray}
K_\mu 
=
 \mathrm{i}  \left(x^2 \delta^\nu_\mu - 2x^\nu x_\mu\right) \frac{\partial }{\partial x^\nu}
\end{eqnarray}
}

となる。

共形変換代数 { so(4,2) }

Poincaré代数の各演算子と伸長演算子と特殊共形変換演算子がなす代数を共形変換代数という。
次の交換関係が成立する。

{
\begin{eqnarray}
[ D, K_\mu  ] = \mathrm{i} K_\mu
\end{eqnarray}
}

{
\begin{eqnarray}
[ K_\mu, K_\nu  ] = 0
\end{eqnarray}
}

{
\begin{eqnarray}
[ P_\mu, K_\nu  ] = -2\mathrm{i}M_{\mu\nu} - 2\mathrm{i}\eta_{\mu\nu}D
\end{eqnarray}
}

{
\begin{eqnarray}
[ M_{\mu\nu}, K_\rho  ] = \mathrm{i}\eta_{\mu\rho}K_\nu - \mathrm{i}\eta_{\nu\rho}K_\mu
\end{eqnarray}
}

共形変換代数はリー代数としては { so(4,2) } と同型であるが、それを見通しよくするために、{ 0 \le \mu,\nu \le 3} として、

{
\begin{eqnarray}
M_{4\ -1} &:=& D\\
M_{\mu\ -1} &:=& \frac{1}{2}(K_\mu+P_\mu) \\
M_{\mu\ 4} &:=& \frac{1}{2}(K_\mu-P_\mu) 
\end{eqnarray}
}

を導入する。
これを用いると、  {M_{\mu\nu} \ \ (-1 \le \mu < \nu \le 4) } は共形変換代数の基底をなすことがわかる。(次元は15)
そして、元の計量テンソルを拡張した新たな6次元の計量テンソル {\eta} を導入する。

{
\begin{eqnarray}
\eta 
&=& 
\begin{pmatrix}
{-}1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
0 & {-}1 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 1 
\end{pmatrix} \\
&=&
\mathrm{diag}(-1,-1,1,1,1,1)
\end{eqnarray}
}

負の符号をもつ第(−1)成分と、正の符号をもつ第4成分が加わったことになる。
この計量テンソルを用いると、交換関係は

{
\begin{eqnarray}
[ M_{\mu\nu}, M_{\rho\sigma} ]
=   \mathrm{i} \eta_{\mu\rho}M_{\nu\sigma} 
{-} \mathrm{i} \eta_{\nu\rho}M_{\mu\sigma}
{-} \mathrm{i} \eta_{\mu\sigma}M_{\nu\rho}
{+} \mathrm{i} \eta_{\nu\sigma}M_{\mu\rho}
\end{eqnarray}
}

のように統一的に書かれることがわかる。
すなわち共形変換代数がリー代数としては { so(4,2) } と同型であることが明確となった。

コメント

共形変換代数は任意の次元のEuclid空間 {\mathbb{R}^{n}} やLorentz空間 {\mathbb{R}^{p,q}} に一般化できる。
すなわち、今回紹介したMinkowski空間 {\mathbb{R}^{1,3}} と同様の手法で共形変換代数を構成できる。
Euclid空間 {\mathbb{R}^{n}} の場合は共形変換代数は、{ so(n+1,1) } となり、Lorentz空間 {\mathbb{R}^{p,q}} の場合は共形変換代数は、{ so(p+1,q+1) } となる。

Copyright © 2016 ブログ名 All rights reserved.