adhara’s blog

数理物理に関する記事を書きます。 https://twitter.com/adhara_mathphys

非相対論的水素原子の束縛状態スペクトルを経路積分により求める方法 〜Duru-Kleinert変換〜

数回に分けて、水素様原子に対する(非相対論的)束縛状態エネルギースペクトル
 {\displaystyle
E_n = - \frac{1}{2n^2}\frac{m_e}{\hbar^2}\left(\frac{Ze^2}{4\pi\epsilon_0} \right)^2
}
を求めるための8通りの解法を紹介する予定である。

  1. E. Schrödingerによる波動方程式解法(ラゲール陪多項式を用いる)
  2. W. Pauliによるso(4)代数を用いる解法
  3. su(1,1)代数を用いた解法
  4. 因数分解を用いた解法
  5. V. Fockによる運動量表示を用いた解法
  6. E. Schrödinger、P. S. Epstein、I. Wallerらによる波動方程式解法(放物線座標表示の解)
  7. Kustaanheimo-Stiefel 変換を用いた解法
  8. 経路積分を用いる方法

本記事では第八弾の経路積分を用いた方法を紹介する。
Schrödinger方程式のグリーン関数経路積分によって計算するのだが、その際にDuru-Kleinert変換を用いることを特徴とする。
特に Grosche, C. (1993). An introduction into the Feynman path integral. arXiv preprint hep-th/9302097. を参考にした。


以下にノートを貼り付ける。

今後の展望

SO(4,2)代数構造との関連性、水素原子のコヒーレント状態について書く。

リファレンス

ラゲール多項式やラゲール陪多項式のプロット

ラゲール多項式やラゲール陪多項式をSageMath(jupyter notebookバージョン)でプロットしてみた。
これらの定義はリファレンスや関連記事に詳しい。

SageMathにおいてラゲール多項式自体はここにあるように定義されているのだが、あえて
合流型超幾何関数を用いて定義した。


SageMathについて

SageMathは内部でLaTeXを使えるので、グラフ中に数式を書いたりするのに大変便利である。
SageMath の jupyter notebook バージョンはインタラクティブに操作できるので便利である。
SageMath では数式から LaTeX のコードを生成することが可能である。


リファレンス

エルミート多項式をラゲール関数で書く。

エルミート(Hermite)多項式をラゲール(Laguerre)関数で書き換える、ということを行う。

合流型超幾何関数を用いたラゲール関数の定義

この記事においてラゲール関数はラゲール陪多項式に出てくる指数を非整数に拡張したものを意味するものとする。
指数が非整数となるラゲール関数はもはや多項式にはならないので、以前紹介した母関数やロドリゲス表示によって定義することは叶わない。
定義としては第一種合流型超幾何関数(例えばこちらを参照)を採用するのが良いと考えられる。(上記のラゲールの陪微分方程式を満たすことが示される)
すなわち、

{
\begin{align}
L^k_n(x) = \frac{(k+1)_n}{n!} M(-n,k+1;x)
\end{align}
}

で定義される。(ここでは {n}自然数{k} は非整数でも良い。ただし {n} を非整数とするさらなる拡張も可能である。)
ここで第一種合流型超幾何関数は、

{
\begin{align}
M(a,b,x) = \sum_{l=0}^\infty \frac{(a)_l}{(b)_l} \frac{x^l}{l!}
\end{align}
}

で定義される。({ {}_1 F_1 (a;b;x) } と書くこともある。)
しばしば出てくるポッホハマー記号 { (a)_n} は特殊関数の文脈では

{
\begin{align}
(a)_n = \prod_{l=0}^{n-1}(a+l)=a\cdot(a+1)\cdots (a+n-1)
\end{align}
}

で定義される。(組み合わせ論の文脈では異なる定義となっているので注意。)

このとき、ラゲール関数はラゲールの陪微分方程式

{
\begin{align}
x\frac{d^2L_n^k}{dx^2}+(k+1-x)\frac{dL_n^k}{dx}+nL_n^k(x)=0
\end{align}
}

の解となっていることがわかる。

エルミート多項式の定義と諸性質

エルミート多項式をここでは母関数を用いて定義する。
すなわち、

{
\begin{align}
g(x,t) = e^{-t^2+2tx} = \sum_{n=0}^\infty H_n(x) \frac{t^n}{n!}
\end{align}
}

でエルミート多項式たち {H_n(x)} を定義する。

このとき、{g(x,t)}{n}{t} 微分して {t=0} を代入することにより、ロドリゲス表示

{
\begin{align}
H_n(x) = (-1)^{n}e^{x^2}\frac{d^n}{dx^n}e^{-x^2}
\end{align}
}

を得る。

また、{g(x,t)}{x} 微分することにより関係式

{
\begin{align}
H_{n}'(x) = 2nH_{n-1}(x)
\end{align}
}

を得る。

さらに、{g(x,t)}{t} 微分することにより関係式

{
\begin{align}
H_{n+1}(x) = -2nH_{n-1}(x) + 2xH_n(x)
\end{align}
}

を得る。

上の二つの関係式を合わせることにより、エルミートの微分方程式

{
\begin{align}
H_n''(x) - 2x H_n'(x) + 2n H_n(x) = 0
\end{align}
}

を得る。

エルミート多項式をラゲール関数で書く。

まず、{x\ge0} とする。
{x^2=t} の変数変換を行うと、{\frac{d}{dx} = 2t^{\frac12}\frac{d}{dt} }{\frac{d^2}{dx^2} = 2\frac{d}{dt} + 4t\frac{d^2}{dt^2} }となることから、エルミートの微分方程式

{
t \frac{d^2}{dt^2} H_n + \left( \frac12 - t \right) \frac{d}{dt}H_n + \frac{n}{2} H_n = 0
}

となる。

また、{ H_n(x) = xT_n(x^2) } と置いて同様に {x^2=t} の変数変換を行うと、

{
t \frac{d^2}{dt^2} T_n + \left( \frac32 - t \right) \frac{d}{dt}T_n + \frac{n-1}{2} T_n = 0
}

となる。

ラゲールの陪微分方程式と見比べると、偶数次のエルミート多項式については一つ目の変数変換微分方程式を参照することにより、

{
H_{2n}(x) \propto L^{-\frac12}_n (x^2)
}

となることがわかる。
奇数次のエルミート多項式については二つ目の変数変換微分方程式を参照することにより、

{
H_{2n+1}(x) \propto xL^{\frac12}_n (x^2)
}

となることがわかる。
エルミート多項式の偶奇性より、{x\ge0} でも同じ表式であることがわかる。

エルミート多項式の第一種合流型超幾何関数による表示

ラゲール陪多項式の第一種合流型超幾何関数による表示と見比べることで、エルミート多項式も第一種合流型超幾何関数を用いて表示することができる

偶数次については

{
H_{2n}(x) = (-1)^n \frac{(2n)!}{n!} M\left(-n,\frac12 ,x^2\right)
}

となり、奇数次については

{
H_{2n+1}(x) = (-1)^n \frac{2(2n+1)!}{n!} x\ M\left(-n,\frac32 ,x^2\right)
}

となる。

Kustaanheimo-Stiefel 変換(その3)〜非相対論的水素原子Schrödinger方程式を解く〜

いくつかの記事で水素原子やケプラー問題を四次元調和振動子の問題に変換するKustaanheimo-Stiefel (KS) 変換について紹介していく予定である。
第三弾である本記事ではKS変換によって導出された固有方程式を実際に解く、ということを行う。

はじめに

本記事では非相対論的水素原子のSchrödinger方程式をKustaanheimo-Stiefel変換によって四次元空間中の調和振動子量子力学的問題に書き換えた方程式を実際に解く。本記事を書くにあたりCornish, F. H. J. (1984)を参考にしている。

ノート

ノートの構成は

  1. 前ノートのおさらい
  2. 変数分離の実行
  3. 二階微分方程式の解法
  4. 波動関数とエネルギー

となっている。
以下にノートを貼り付ける


まとめと今後の展望

本記事では非相対論的水素原子のSchrödinger方程式をKustaanheimo-Stiefel変換によって四次元空間中の調和振動子量子力学的問題に書き換えた方程式を実際に解く、ということを行った。
波動関数の表示が放物線座標表示の解と等価であることがわかった。
続く記事では1)KS変換におけるLRLベクトルの役割、2)ボソン消滅演算子を用いた表示との関係性、を紹介したいと考えている。

リファレンス

Levi-Civita 変換の元論文

Kustaanheimo-Stiefel 変換の元論文

古典力学におけるKS変換を四元数で書いたもの

Schrödinger方程式の変換について

Feynmanの経路積分表示に関して

Weyl-Wigner-Moyal形式の表示に関して

Jordan-WignerのBoson化を利用した波動関数の表示に関して

Kustaanheimo-Stiefel 変換(その2)〜非相対論的水素原子Schrödinger方程式の書き換え〜

いくつかの記事で水素原子やケプラー問題を四次元調和振動子の問題に変換するKustaanheimo-Stiefel (KS) 変換について紹介していく予定である。
第二弾である本記事では非相対論的水素原子のSchrödinger方程式をKS変換により書き換えるということを行う。

はじめに

本記事では非相対論的水素原子のSchrödinger方程式をKustaanheimo-Stiefel変換によって四次元空間中の調和振動子量子力学的問題に書き換える、ということを行う。本記事を書くにあたりCornish, F. H. J. (1984)を参考にしている。

ノート

ノートの構成は

  1. 問題設定
  2. Kustaanheimo-Stiefel 変換の準備
  3. Schrödinger 方程式に対するKustaanheimo-Stiefel 変換の適用
  4. 四次元空間中の調和振動子の問題への変換

となっている。
以下にノートを貼り付ける


まとめと今後の展望

本記事では非相対論的水素原子のSchrödinger方程式をKustaanheimo-Stiefel変換によって四次元空間中の調和振動子量子力学的問題に書き換える、ということを行った。
KS変換により確かに四次元空間中の調和振動子量子力学的問題に書き換わったが、角運動量に関する拘束条件が課せられることもわかった。
次の記事ではこの変換後のSchrödinger方程式を解くことで、エネルギーと波動関数を求める。
そしてこの波動関数の表示が放物線座標表示の解と等価であることを示す。

リファレンス

Levi-Civita 変換の元論文

Kustaanheimo-Stiefel 変換の元論文

古典力学におけるKS変換を四元数で書いたもの

Schrödinger方程式の変換について

Feynmanの経路積分表示に関して

Weyl-Wigner-Moyal形式の表示に関して

Jordan-WignerのBoson化を利用した波動関数の表示に関して

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