adhara’s blog

数理物理に関する記事を書きます。 https://twitter.com/adhara_mathphys

水素様原子に対するKlein-Gordon方程式

非相対論的水素(様)原子については様々な解法があり、その豊富な解法には隠れた数理構造があることはこのブログで多数紹介している。
例えばレビュー記事としてまとめている。
【レビュー】非相対論的水素原子Schrödinger方程式における力学的対称性 - adhara’s blog

一方、相対論的水素原子においては非相対論的水素原子において存在していた {SO(4)} 対称性に基づく縮退が破れる。
このことをKlein-Gordon方程式を解くことで見ようというのが、本記事である。
この記事を書くモチベーションとしては、相対論的水素原子に関する力学的対称性に関する様々な文献*1の存在がある。


ノートの構成は以下の様になっている。

  1. 問題設定
  2. エネルギースペクトル導出の準備
  3. エネルギースペクトルの導出

以下、ノートに詳細を記す。

まとめと今後の展望

Klein-Gordn方程式では、非相対論的な問題では存在していた高度な対称性が失われることを見た。
次は水素原子に対するDirac方程式についても高度な対称性が失われることを見る。

共形変換代数so(4,2)

Minkowski空間 {\mathbb{R}^{1,3}} におけるMaxwell方程式はLorentz対称性に加えて共形対称性(conformal symmetry)をもつ。
本記事では共形対称性に対応する共形変換代数 { so(4,2) } について紹介する。

表記について

以下の議論ではEinsteinの縮約が使われる。
テンソルの上付き添え字は反変成分に、下付き添え字は共変成分に対応する。
ここで計量テンソル {\eta} を導入したが、これを行列として表示した場合に

{
\begin{eqnarray}
\eta 
&=& 
\begin{pmatrix}
{-}1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix} \\
&=&
\mathrm{diag}(-1,1,1,1)
\end{eqnarray}
}

となるように定義している。時間成分は第0成分、空間成分は第1,2,3成分とする。

また反変ベクトルに対して、{x^2}{x^\mu x_\mu=\eta_{\mu\nu}x^\mu x^\nu} を表すものとする。

ミンコフスキー距離を保つ微小な線形座標変換

微小な線形座標変換

{
\begin{eqnarray}
dx'^\nu = \Lambda^\nu{}_\mu dx^\mu = (\delta^\nu{}_\mu+L^\nu{}_\mu )dx^\mu 
\end{eqnarray}
}

について考える。
微小座標変換がミンコフスキー距離 {\eta_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu} を保つとは、

{
\begin{eqnarray}
\eta_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu 
= \eta_{\mu\nu}dx'^\mu dx'^\nu 
= \eta_{\mu\nu}\Lambda^\mu{}_\rho \Lambda^\nu{}_\sigma dx^\rho dx^\sigma
\end{eqnarray}
}

{O(L)} の範囲で成立することを言う。
このとき、右辺において {O(L^2)} となる項を無視すると、

{
\begin{eqnarray}
\eta_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu 
&=&
\eta_{\mu\nu}\Lambda^\mu{}_\rho \Lambda^\nu{}_\sigma dx^\rho dx^\sigma \\
&=&
(\eta_{\rho\sigma} + \eta_{\rho\nu}L^\nu{}_\sigma + \eta_{\mu\sigma}L^\mu{}_\rho ) dx^\rho dx^\sigma 
\end{eqnarray}
}

が成立する。
すなわち、

{
\begin{eqnarray}
&=&
(L_{\rho\sigma} + L_{\sigma\rho} )dx^\rho dx^\sigma = 0
\end{eqnarray}
}

が成立し、{L}が反対称テンソルであることすなわち、

{
L_{\rho\sigma} + L_{\sigma\rho} =0
}

を要請する。
ミンコフスキー距離を保つ微小な線形変換は、Minkowski空間における狭義回転すなわち狭義Lorentz変換に対応する。

狭義Lorentz変換リー代数 {so(3,1)\simeq sl(2, \mathbb{C})}

狭義回転演算子{ L} としたとき、これに期待される役割は {O(L)} の範囲で反対称テンソル {L^\rho{}_\mu }を用いて

{
\begin{eqnarray}
e^{-\mathrm{i}L} x^\rho e^{\mathrm{i} L} =  (\delta^\rho{}_\mu + L^\rho{}_\mu) x^\mu
\end{eqnarray}
}

と書けること、すなわち反対称テンソル {L^\rho{}_\mu }を用いて

{
\begin{eqnarray}
[ L , x^\rho ]=  \mathrm{i}L^\rho{}_\mu x^\mu 
\end{eqnarray}
}

と書けることである。
このとき、 { L} は、

{
\begin{eqnarray}
 L &=& \mathrm{i} x^\mu L^\nu{}_\mu\frac{\partial}{\partial x^\nu} \\
&=&
\mathrm{i} x_\mu L^{\nu\mu}\frac{\partial}{\partial x^\nu}\\
&=&
{-}\mathrm{i} x_\mu L^{\mu\nu}\frac{\partial}{\partial x^\nu}
\end{eqnarray}
}

と書ける。
ここで、狭義回転演算子

{
\begin{eqnarray}
{M}_{\mu\nu} 
&=& 
{-} \mathrm{i}\eta_{\mu\alpha}x^\alpha\frac{\partial}{\partial x^\nu} 
{+} \mathrm{i}\eta_{\nu\alpha}x^\alpha\frac{\partial}{\partial x^\mu} \\
&=&
{-} \mathrm{i}x_\mu\frac{\partial}{\partial x^\nu} 
{+} \mathrm{i}x_\nu\frac{\partial}{\partial x^\mu} 
\end{eqnarray}
}

を導入すると、

{
\begin{eqnarray}
 L 
&=&
{-}\mathrm{i} x_\mu L^{\mu\nu}\frac{\partial}{\partial x^\nu}\\
&=&
\frac12 L^{\mu\nu}
\left(
{-}\mathrm{i} x_\mu\frac{\partial}{\partial x^\nu}
{+}\mathrm{i} x_\nu \frac{\partial}{\partial x^\mu}
\right)
\\
&=&
\frac12 L^{\mu\nu} M_{\mu\nu}
\end{eqnarray}
}

が成立する。

ここで、{M_{\mu\nu}}同士の交換関係をリーブラケットと解釈すると、これらの演算子リー代数 {so(3,1)\simeq sl(2, \mathbb{C})} をなすことがわかる。
すなわち、

{
\begin{eqnarray}
[ M_{\mu\nu}, M_{\rho\sigma} ]
=   \mathrm{i} \eta_{\mu\rho}M_{\nu\sigma} 
{-} \mathrm{i} \eta_{\nu\rho}M_{\mu\sigma}
{-} \mathrm{i} \eta_{\mu\sigma}M_{\nu\rho}
{+} \mathrm{i} \eta_{\nu\sigma}M_{\mu\rho}
\end{eqnarray}
}

が成立する。
また、{M_{\mu\nu}} \ \ (\mu<\nu)は基底をなし、リー代数の次元は6であることもわかる。

並進演算子

Minkowski空間は並進対称性をもつ。
並進演算子{ P} としたとき、これに期待される役割は {O(\epsilon)} の範囲で

{
\begin{eqnarray}
e^{-\mathrm{i}P} x^\rho e^{\mathrm{i} P} =  x^\rho + \epsilon^\rho
\end{eqnarray}
}

と書けること、すなわち

{
\begin{eqnarray}
[ P , x^\rho ]=  \mathrm{i} \epsilon^\rho 
\end{eqnarray}
}

と書けることである。
このとき、 { P} は、

{
\begin{eqnarray}
P 
&=& \mathrm{i} \epsilon^\mu \frac{\partial}{\partial x^\mu} 
\end{eqnarray}
}

と書ける。
ここで、並進演算子

{
\begin{eqnarray}
{P}_{\mu} 
&=& 
\mathrm{i} \frac{\partial}{\partial x^\mu} 
\end{eqnarray}
}

を導入すると、

{
\begin{eqnarray}
P
&=& \epsilon^\mu P_\mu
\end{eqnarray}
}

と書ける。
明らかに

{
\begin{eqnarray}
\left[P_\mu,P_\nu \right] = 0
\end{eqnarray}
}

である。

Poincaré対称性とリー代数 {iso(3,1)}

並進演算子と狭義Lorentz変換演算子がなす代数はPoincaré代数と呼ばれ、Minkowski空間の対称性であるPoincaré対称性を記述する。
演算子の間では交換関係

{
\begin{eqnarray}
\left[M_{\mu\nu},P_\rho \right] = \mathrm{i}\eta_{\mu\rho}P_\nu - \mathrm{i}\eta_{\nu\rho}P_\mu
\end{eqnarray}
}

が成立する。
Poincaré代数はリー代数としては {iso(3,1)} と同型である。

Minkowski距離が0の場合にこれを保つ微小線形変換

再び微小な線形座標変換

{
\begin{eqnarray}
dx'^\nu = \Lambda^\nu{}_\mu dx^\mu = (\delta^\nu{}_\mu+L^\nu{}_\mu )dx^\mu 
\end{eqnarray}
}

について考える。
微小座標変換がミンコフスキー距離 {\eta_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu=0} を保つとは、

{
\begin{eqnarray}
\eta_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu 
= \eta_{\mu\nu}dx'^\mu dx'^\nu 
= \eta_{\mu\nu}\Lambda^\mu{}_\rho \Lambda^\nu{}_\sigma dx^\rho dx^\sigma
=0
\end{eqnarray}
}

{O(L)} の範囲で成立することを言う。
このとき、狭義Lorentz変換に対応する微小線形変換に限らず、


{
L_{\rho\sigma} \propto \eta_{\rho\sigma}
}

のときも成立する。
これは計量を定数倍するものであり、スケール変換あるいは伸長変換(dilation)に対応するものである。

伸長演算子

座標を  {(1+\epsilon)} 倍する伸長演算子{ D(1+\epsilon)} としたとき、これに期待される役割は {O(\epsilon)} の範囲で

{
\begin{eqnarray}
e^{-\mathrm{i}D(1+\epsilon)} x^\rho e^{\mathrm{i} D(1+\epsilon)} =  (1+\epsilon) x^\rho 
\end{eqnarray}
}

と書けること、すなわち

{
\begin{eqnarray}
[ D(1+\epsilon) , x^\rho ]=  \mathrm{i} \epsilon x^\rho 
\end{eqnarray}
}

と書けることである。
すなわち、伸長演算子

{
\begin{eqnarray}
D
=\mathrm{i}   x^\mu\frac{\partial}{\partial x^\mu}
\end{eqnarray}
}

を導入して、

{
\begin{eqnarray}
D(1+\epsilon)
= \epsilon D
\end{eqnarray}
}

と書ける。
伸長演算子とPoincaré代数を合わせたリー代数においては、次の交換関係が成立する。

{
\begin{eqnarray}
[ D , M_{\mu\nu} ] =0
\end{eqnarray}
}

{
\begin{eqnarray}
[ D , P_{\mu} ] = -\mathrm{i}P_\mu
\end{eqnarray}
}

このリー代数はスケール不変性を保つ理論について議論する際に必要となる。

反転演算子

反転変換(inversion)あるいは反転演算子という概念を導入する。
共形対称性を保つ理論を考える際には必須となる演算子である。
離散変換

{
I : x^\nu \mapsto \frac{x^\nu}{x^2}
}

を反転変換と呼び、対応する演算子を反転演算子と呼ぶ。
反転演算子

{
\begin{eqnarray}
I^2 = 1
\end{eqnarray}
}

となる性質を持つ。
また、{y=Ix} とした時に座標変換のヤコビアン

{
\begin{eqnarray}
 \frac{\partial y^\nu}{\partial x^\mu}
= \frac{1}{x^2}\left( \delta^\nu_\mu - \frac{2x^\nu x_\mu}{x^2}\right)
\end{eqnarray}
}

である。

伸長演算子と反転演算子の関係

次の式が成立する。

{
\begin{eqnarray}
IDI = -D
\end{eqnarray}
}

この式は、{y=Ix} とした時に、

{
\begin{eqnarray}
DIf(x) 
&=&
 \mathrm{i}x^\mu \frac{\partial}{\partial x^\mu} f(y)\\
&=&
 \mathrm{i}x^\mu \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y) \frac{\partial y^\nu}{\partial x^\mu}\\
&=&
 \mathrm{i}x^\mu \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y) \frac{1}{x^2}\left( \delta^\nu_\mu - \frac{2x^\nu x_\mu}{x^2}\right)\\
&=&
{-} \mathrm{i} \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y) \frac{x^\nu}{x^2}\\
&=&
{-} \mathrm{i} \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y) y^\nu
\end{eqnarray}
}

が成立し、

{
\begin{eqnarray}
IDIf(x) 
&=&
{-} \mathrm{i} I(y^\nu \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y)) \\
&=&
{-} \mathrm{i} x^\nu \frac{\partial f}{\partial x^\nu}(x)\\
&=&
{-}Df(x)
\end{eqnarray}
}

となる。二つ目の等号では {Iy=x} を用いている。

特殊共形変換演算子

反転演算子 {I} は原点の変換について特異的な性質を持っており、扱いやすいものではない。
ところが {K_\mu = IP_\mu I} のような演算子を考えると、これは特異性を持たない。
この演算子を特殊共形変換演算子と呼ぶ。
この演算子を求めよう。
まず、

{
\begin{eqnarray}
P_\mu If(x) 
&=&
 \mathrm{i} \frac{\partial}{\partial x^\mu} f(y)\\
&=&
 \mathrm{i} \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y) \frac{\partial y^\nu}{\partial x^\mu}\\
&=&
 \mathrm{i} \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y) \frac{1}{x^2}\left( \delta^\nu_\mu - \frac{2x^\nu x_\mu}{x^2}\right) \\
&=&
 \mathrm{i} \frac{\partial f}{\partial y^\nu}(y) \frac{1}{x^2}\left( \delta^\nu_\mu - 2y^\nu x_\mu\right) \\
\end{eqnarray}
}

となる。
ここで { Ix^2 = \frac{1}{x^2}} を用いると、

{
\begin{eqnarray}
IP_\mu If(x) 
&=&
 \mathrm{i} \frac{\partial f}{\partial x^\nu}(x) x^2\left( \delta^\nu_\mu - 2x^\nu y_\mu\right) \\
&=&
 \mathrm{i} \frac{\partial f}{\partial x^\nu}(x) \left(x^2 \delta^\nu_\mu - 2x^\nu x_\mu\right) 
\end{eqnarray}
}

となる。
すなわち、

{
\begin{eqnarray}
K_\mu 
=
 \mathrm{i}  \left(x^2 \delta^\nu_\mu - 2x^\nu x_\mu\right) \frac{\partial }{\partial x^\nu}
\end{eqnarray}
}

となる。

共形変換代数 { so(4,2) }

Poincaré代数の各演算子と伸長演算子と特殊共形変換演算子がなす代数を共形変換代数という。
次の交換関係が成立する。

{
\begin{eqnarray}
[ D, K_\mu  ] = \mathrm{i} K_\mu
\end{eqnarray}
}

{
\begin{eqnarray}
[ K_\mu, K_\nu  ] = 0
\end{eqnarray}
}

{
\begin{eqnarray}
[ P_\mu, K_\nu  ] = -2\mathrm{i}M_{\mu\nu} - 2\mathrm{i}\eta_{\mu\nu}D
\end{eqnarray}
}

{
\begin{eqnarray}
[ M_{\mu\nu}, K_\rho  ] = \mathrm{i}\eta_{\mu\rho}K_\nu - \mathrm{i}\eta_{\nu\rho}K_\mu
\end{eqnarray}
}

共形変換代数はリー代数としては { so(4,2) } と同型であるが、それを見通しよくするために、{ 0 \le \mu,\nu \le 3} として、

{
\begin{eqnarray}
M_{4\ -1} &:=& D\\
M_{\mu\ -1} &:=& \frac{1}{2}(K_\mu+P_\mu) \\
M_{\mu\ 4} &:=& \frac{1}{2}(K_\mu-P_\mu) 
\end{eqnarray}
}

を導入する。
これを用いると、  {M_{\mu\nu} \ \ (-1 \le \mu < \nu \le 4) } は共形変換代数の基底をなすことがわかる。(次元は15)
そして、元の計量テンソルを拡張した新たな6次元の計量テンソル {\eta} を導入する。

{
\begin{eqnarray}
\eta 
&=& 
\begin{pmatrix}
{-}1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
0 & {-}1 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 1 
\end{pmatrix} \\
&=&
\mathrm{diag}(-1,-1,1,1,1,1)
\end{eqnarray}
}

負の符号をもつ第(−1)成分と、正の符号をもつ第4成分が加わったことになる。
この計量テンソルを用いると、交換関係は

{
\begin{eqnarray}
[ M_{\mu\nu}, M_{\rho\sigma} ]
=   \mathrm{i} \eta_{\mu\rho}M_{\nu\sigma} 
{-} \mathrm{i} \eta_{\nu\rho}M_{\mu\sigma}
{-} \mathrm{i} \eta_{\mu\sigma}M_{\nu\rho}
{+} \mathrm{i} \eta_{\nu\sigma}M_{\mu\rho}
\end{eqnarray}
}

のように統一的に書かれることがわかる。
すなわち共形変換代数がリー代数としては { so(4,2) } と同型であることが明確となった。

コメント

共形変換代数は任意の次元のEuclid空間 {\mathbb{R}^{n}} やLorentz空間 {\mathbb{R}^{p,q}} に一般化できる。
すなわち、今回紹介したMinkowski空間 {\mathbb{R}^{1,3}} と同様の手法で共形変換代数を構成できる。
Euclid空間 {\mathbb{R}^{n}} の場合は共形変換代数は、{ so(n+1,1) } となり、Lorentz空間 {\mathbb{R}^{p,q}} の場合は共形変換代数は、{ so(p+1,q+1) } となる。

非相対論的水素原子の束縛状態スペクトルを経路積分により求める方法 〜Duru-Kleinert変換〜

数回に分けて、水素様原子に対する(非相対論的)束縛状態エネルギースペクトル
 {\displaystyle
E_n = - \frac{1}{2n^2}\frac{m_e}{\hbar^2}\left(\frac{Ze^2}{4\pi\epsilon_0} \right)^2
}
を求めるための8通りの解法を紹介する予定である。

  1. E. Schrödingerによる波動方程式解法(ラゲール陪多項式を用いる)
  2. W. Pauliによるso(4)代数を用いる解法
  3. su(1,1)代数を用いた解法
  4. 因数分解を用いた解法
  5. V. Fockによる運動量表示を用いた解法
  6. E. Schrödinger、P. S. Epstein、I. Wallerらによる波動方程式解法(放物線座標表示の解)
  7. Kustaanheimo-Stiefel 変換を用いた解法
  8. 経路積分を用いる方法

本記事では第八弾の経路積分を用いた方法を紹介する。
Schrödinger方程式のグリーン関数経路積分によって計算するのだが、その際にDuru-Kleinert変換を用いることを特徴とする。
特に Grosche, C. (1993). An introduction into the Feynman path integral. arXiv preprint hep-th/9302097. を参考にした。


以下にノートを貼り付ける。

今後の展望

SO(4,2)代数構造との関連性、水素原子のコヒーレント状態について書く。

リファレンス

ラゲール多項式やラゲール陪多項式のプロット

ラゲール多項式やラゲール陪多項式をSageMath(jupyter notebookバージョン)でプロットしてみた。
これらの定義はリファレンスや関連記事に詳しい。

SageMathにおいてラゲール多項式自体はここにあるように定義されているのだが、あえて
合流型超幾何関数を用いて定義した。


SageMathについて

SageMathは内部でLaTeXを使えるので、グラフ中に数式を書いたりするのに大変便利である。
SageMath の jupyter notebook バージョンはインタラクティブに操作できるので便利である。
SageMath では数式から LaTeX のコードを生成することが可能である。


リファレンス

エルミート多項式をラゲール関数で書く。

エルミート(Hermite)多項式をラゲール(Laguerre)関数で書き換える、ということを行う。

合流型超幾何関数を用いたラゲール関数の定義

この記事においてラゲール関数はラゲール陪多項式に出てくる指数を非整数に拡張したものを意味するものとする。
指数が非整数となるラゲール関数はもはや多項式にはならないので、以前紹介した母関数やロドリゲス表示によって定義することは叶わない。
定義としては第一種合流型超幾何関数(例えばこちらを参照)を採用するのが良いと考えられる。(上記のラゲールの陪微分方程式を満たすことが示される)
すなわち、

{
\begin{align}
L^k_n(x) = \frac{(k+1)_n}{n!} M(-n,k+1;x)
\end{align}
}

で定義される。(ここでは {n}自然数{k} は非整数でも良い。ただし {n} を非整数とするさらなる拡張も可能である。)
ここで第一種合流型超幾何関数は、

{
\begin{align}
M(a,b,x) = \sum_{l=0}^\infty \frac{(a)_l}{(b)_l} \frac{x^l}{l!}
\end{align}
}

で定義される。({ {}_1 F_1 (a;b;x) } と書くこともある。)
しばしば出てくるポッホハマー記号 { (a)_n} は特殊関数の文脈では

{
\begin{align}
(a)_n = \prod_{l=0}^{n-1}(a+l)=a\cdot(a+1)\cdots (a+n-1)
\end{align}
}

で定義される。(組み合わせ論の文脈では異なる定義となっているので注意。)

このとき、ラゲール関数はラゲールの陪微分方程式

{
\begin{align}
x\frac{d^2L_n^k}{dx^2}+(k+1-x)\frac{dL_n^k}{dx}+nL_n^k(x)=0
\end{align}
}

の解となっていることがわかる。

エルミート多項式の定義と諸性質

エルミート多項式をここでは母関数を用いて定義する。
すなわち、

{
\begin{align}
g(x,t) = e^{-t^2+2tx} = \sum_{n=0}^\infty H_n(x) \frac{t^n}{n!}
\end{align}
}

でエルミート多項式たち {H_n(x)} を定義する。

このとき、{g(x,t)}{n}{t} 微分して {t=0} を代入することにより、ロドリゲス表示

{
\begin{align}
H_n(x) = (-1)^{n}e^{x^2}\frac{d^n}{dx^n}e^{-x^2}
\end{align}
}

を得る。

また、{g(x,t)}{x} 微分することにより関係式

{
\begin{align}
H_{n}'(x) = 2nH_{n-1}(x)
\end{align}
}

を得る。

さらに、{g(x,t)}{t} 微分することにより関係式

{
\begin{align}
H_{n+1}(x) = -2nH_{n-1}(x) + 2xH_n(x)
\end{align}
}

を得る。

上の二つの関係式を合わせることにより、エルミートの微分方程式

{
\begin{align}
H_n''(x) - 2x H_n'(x) + 2n H_n(x) = 0
\end{align}
}

を得る。

エルミート多項式をラゲール関数で書く。

まず、{x\ge0} とする。
{x^2=t} の変数変換を行うと、{\frac{d}{dx} = 2t^{\frac12}\frac{d}{dt} }{\frac{d^2}{dx^2} = 2\frac{d}{dt} + 4t\frac{d^2}{dt^2} }となることから、エルミートの微分方程式

{
t \frac{d^2}{dt^2} H_n + \left( \frac12 - t \right) \frac{d}{dt}H_n + \frac{n}{2} H_n = 0
}

となる。

また、{ H_n(x) = xT_n(x^2) } と置いて同様に {x^2=t} の変数変換を行うと、

{
t \frac{d^2}{dt^2} T_n + \left( \frac32 - t \right) \frac{d}{dt}T_n + \frac{n-1}{2} T_n = 0
}

となる。

ラゲールの陪微分方程式と見比べると、偶数次のエルミート多項式については一つ目の変数変換微分方程式を参照することにより、

{
H_{2n}(x) \propto L^{-\frac12}_n (x^2)
}

となることがわかる。
奇数次のエルミート多項式については二つ目の変数変換微分方程式を参照することにより、

{
H_{2n+1}(x) \propto xL^{\frac12}_n (x^2)
}

となることがわかる。
エルミート多項式の偶奇性より、{x\ge0} でも同じ表式であることがわかる。

エルミート多項式の第一種合流型超幾何関数による表示

ラゲール陪多項式の第一種合流型超幾何関数による表示と見比べることで、エルミート多項式も第一種合流型超幾何関数を用いて表示することができる

偶数次については

{
H_{2n}(x) = (-1)^n \frac{(2n)!}{n!} M\left(-n,\frac12 ,x^2\right)
}

となり、奇数次については

{
H_{2n+1}(x) = (-1)^n \frac{2(2n+1)!}{n!} x\ M\left(-n,\frac32 ,x^2\right)
}

となる。

Copyright © 2016 ブログ名 All rights reserved.