水素様原子スペクトルに関するBargmannの議論(その2)〜 Pauliの解法と放物線座標表示解法の関係 〜

記事

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ではBargmannの議論にしたがって、水素様原子スペクトルに関するPauliの解法とFockの解法の関係性について説明した。
すなわち、Pauliの解法において重要な働きをしたLRLベクトルが、実は四次元空間における回転群の生成子の一つであることを説明した。

Pauliの解法

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では\textstyle{su(2)} の同じ既約ユニタリ表現に属するベクトルの直積として解を表せることを示した。


\begin{eqnarray}
 | l,m_a\rangle \otimes | l,m_b\rangle  \, \, ( 2l\in \boldsymbol{Z}_{\ge 0},m_a,m_b=-l , -l + 1, \cdots, l-1, l )
\end{eqnarray}

一方、別の記事

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では、放物線座標を用いた解法を説明した。
そこでは、解がラゲール陪多項式二つを用いて


\begin{eqnarray}
\Psi_{N,N_1,m} =
 e^{im\phi}e^{-\frac{\alpha_N}{2}(\lambda_1+\lambda_2)}(\lambda_1\lambda_2)^{\frac{|m|}{2}}
L_{N_1}^{|m|}(\alpha_N \lambda_1) L^{|m|}_{N_2}(\alpha_N \lambda_2)
\end{eqnarray}

と書けることを示した。
ただし、\textstyle{N_2=N-N_1-|m|-1} となっているので、独立な量子数は \textstyle{ N,N_1,m } である。
量子数の許される領域は


\begin{eqnarray}
N\in \boldsymbol{Z}_{+}, \, N_1,N_2 \in \boldsymbol{Z}_{\ge0}, \, m = -(N-1), -(N-2),\cdots, N-2, N-1
\end{eqnarray}

である。

本記事では両方の解法で出てくる解が一対一対応していることを示す。
この発想自体はBargmannによるものであるから、記事の題名として「Bargmannの議論」という言葉を用いている。
水素様原子スペクトルに関するバーグマンの議論2.pdf - Google ドライブ


まとめ

本記事ではPauliの解法と放物線座標表示解法の解が一対一対応していることを示した。
すなわち、


\begin{eqnarray}
 | l,m_a\rangle \otimes | l,m_b\rangle = \Psi_{2l+1,l-\frac{|m_a+m_b|+(m_a-m_b)}{2},m_a+m_b} 
\end{eqnarray}

の関係が成立している。
この対応が存在する原因は、どちらの解もハミルトニアン角運動量極軸(あるいは量子化軸)成分、LRLベクトル極軸(あるいは量子化軸)成分、の三つの演算子の同時固有状態となっていることに由来する。
よく知られた極座標表示解法による解がハミルトニアン角運動量の自乗、角運動量極軸(あるいは量子化軸)成分、の三つの演算子の同時固有状態となっていることと対照的である。

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