SO(4)群とso(4)代数の表現論(その3)〜 WignerのD行列を用いた四次元球面調和関数の表示 〜

以前の記事
adhara.hatenadiary.jp

では同じ次数の四次元球面調和関数がなす空間がSO(4)の表現空間としては既約であることをリー代数を用いて示した。

高次元の球面調和関数については
adhara.hatenadiary.jp

でも議論しており、高次元球面上の自乗可積分関数が対応する次元の球面調和関数で展開できることを述べている。(フーリエ展開の拡張に相当する)

さらに
adhara.hatenadiary.jp

では球面調和関数の一種である帯球関数をGegenbauer多項式を用いて表している。

本記事ではアプローチを変えて、
adhara.hatenadiary.jp

で導入したWignerのD行列を用いて正規直交基底をなす四次元球面調和関数を構成する、ということを行う。
WignerのD行列はSU(2)の既約ユニタリ表現の行列表示であるが、これを{\textstyle S^3}上の関数と見なすとSchurの直交性から各行列要素が直交することが示される。
各行列要素は既約表現関数あるいは単純表現関数と呼ばれ、これらの線形結合がなす関数全体(同じ既約表現に属する球面調和関数全体である)は表現関数と呼ばれる。

本記事は以下の構成になっている。

  1. コンパクト位相群におけるSchurの直交性
  2. SU(2)とWignerのD行列に関すること
  3. WignerのD行列の各成分が四次元球面調和関数になっており各成分が直交すること

本記事を書くにあたりM. Bander and C. Itzyksonの論文トロント大学講義ノート(Fiona Murnaghaさん)を参考にした。(コンパクト位相群については後者、WignerのD行列から正規直交する四次元球面調和関数を構成するところは前者を参考にした。)

SO(4) 群とso(4) 代数の表現論(その3).pdf - Google ドライブ


今後の展望

テンソル積を用いた表現との関係はいずれ議論したい。
今回紹介した結果の背後にあるPeter-Weyl定理についてもいずれ触れたい。
位相群に関する事項もいずれまとめる。

群の表現論(その2)〜 Schurの補題と有限群に対するSchurの直交性 〜

以前の記事
adhara.hatenadiary.jp
で群の表現論に関する定義といくつかの定理を紹介した。
有限次元表現ユニタリ表現が完全可約(半単純)であるというところまで書いている。

本記事では既約表現に関する重要な定理である、Schurの補題と有限群の有限次元表現に対して成立するSchurの直交性を紹介する。
Schurの直交性は大直交定理とも呼ばれ、既約表現の指標表を作成したりする際に便利である。
指標表は分子や結晶の対称性を調べるときに役立つものである。

本記事の構成はトロント大学の講義ノート(Fiona Murnaghaさん)を参考にしたが、論理を補強するために環上の加群に関する本を参考にした。

群の表現論(その2).pdf - Google ドライブ


今後の展望

実はシューアの直交性に相当するものが、コンパクト位相群の有限次元表現についても成立する。
続編としてはコンパクト位相群自体に関する記事、およびコンパクト位相群に対する表現論に関する記事を予定している。

SU(2)群とsu(2)代数の表現論(その2)〜 有限次元既約ユニタリ表現とWignerのD行列 〜

本記事ではコンパクトリー群の中でもSU(2)群についての有限次元既約ユニタリ表現(unitary irreducible representations)について紹介する。
SU(2)群の既約ユニタリ表現は球面調和関数やスピンを考えるうえで重要である。

本記事の構成は以下のようになっている。

  1. 有限次元表現の導入
  2. ユニタリ性を持つ内積の導入
  3. 既約表現であることの証明
  4. WignerのD行列

ノートを添付する。
SU(2)群とsu(2)代数の表現論(その2).pdf - Google ドライブ


今後の展望

ウィグナーのD行列を使って、SO(4)群の表現論を論じる。

群の表現論(その1)〜 定義や幾つかの事項 〜

本記事では群の表現の定義や表現論の定理の幾つかを紹介する。
表現論の中でもよく用いられるSchurの補題(とその逆)を説明する上での準備という意味合いがある。
本記事の議論は有限群には限定していない(とくにコンパクトリー群への応用を考えているので)。

記事の構成は

  1. 群の表現の定義と幾つかの定理
  2. ユニタリ表現と幾つかの定理

となっている。
本記事の構成はトロント大学の講義ノート(Fiona Murnaghaさん)を参考にしたが、論理を補強するために環上の加群に関する本を参考にした。
群の表現論(その1).pdf - Google ドライブ


今後の展望

Schurの補題やコンパクト群に関する表現論については第二弾記事で扱う。

SU(2)群とsu(2)代数の表現論(その1)〜 SU(2)群とsu(2)代数の導入 〜

本記事ではSU(2)群とsu(2)代数の表現論に関する第一弾の記事である。
第一弾ではSU(2)群の行列を用いた定義、すなわち線形表現による定義を紹介する。
この場合、行列の次元をもつベクトル空間への作用を想定しているので、定義の時点ですでに表現となっている。
表現や表現論については別の機会に説明する。(一言で言うと群から線形写像への群準同型が(線形)表現である)
また、本来は位相空間や(実)多様体位相群の定義からきちんと行う必要があることをコメントしておく。

本記事の構成は

  1. いくつかのリー群の定義
  2. SU(2)群の多様体としての性質
  3. su(2)代数の導入

となっている。
SU(2)群とsu(2)代数の表現論(その1).pdf - Google ドライブ


まとめと今後の展望

本記事ではSU(2)群の行列を用いた定義や多様体としての性質、接ベクトル空間としてのsu(2)代数の導入について説明した。
第二弾の記事でSU(2)群とsu(2)代数の既約ユニタリ表現について紹介する。

Copyright © 2017 ブログ名 All rights reserved.