水素様原子スペクトルに関するBargmannの議論(その1)〜 PauliとFockの解法の関係 〜
水素様原子はハミルトニアンの持つ空間対称性SO(3)を超えた対称性SO(4)を持つことが知られている。
この対称性は力学的対称性と呼ばれる。(シッフの教科書 を参照)
力学的対称性を利用した解法としてはPauliの解法
adhara.hatenadiary.jp
とFockの解法
adhara.hatenadiary.jp
が有名である。
Pauliの解法ではLaplace-Runge-Lenzベクトルというクーロンポテンシャル特有の保存量が角運動量ベクトルとともにso(4)代数を構成することを利用していた。
一方で、Fockの解法では方程式の変換により超球面上のラプラシアン(Laplace-Beltrami演算子)の固有値問題に帰着することを利用していた。
本記事では両者の解法の関係についてのBargmannの議論を紹介する。
すなわち、Fockの解法からLRLベクトルが導出できることを示す。
水素様原子スペクトルに関するバーグマンの議論.pdf - Google ドライブ
まとめ
Fockの解法からLRLベクトルが導出できることを示すという形でPauliとFockの解法の関係性を議論した。
要するにLRLベクトル(ただし規格化したものだが)は、角運動量ベクトルと共に4次元空間の回転生成を担うのである。
この記事の続きとしては、Bargmannの議論の続き、すなわち異なる座標系でシュレディンガー方程式が分離できることについて紹介する。
すなわち、高度な縮退は二種類の座標系で分離できる事実に由来することについて議論する。
リファレンス
Pauli、Fock、Bargmannの論文
この記事を書くにあたり参照する論文
- M. Bander and C. Itzykson, Rev. Mod. Phys. 38, 330 (1966) - Group Theory and the Hydrogen Atom (I)/読めます
その他物理関連
- http://pauli.uni-muenster.de/tp/fileadmin/lehre/TheorieAKkM/ws14/May.pdf
- Laplace–Runge–Lenz vector - Wikipedia
- L. I. Schiff: "Quantum Mechanics" 3rd edition (1968), McGraw-Hill, INC.
- Robert Gilmore, "Lie Groups, Physics, and Geometry: An Introduction for Physicists, Engineers and Chemists" (2008)
- Robert Gilmore, "Lie Groups, Lie Algebras, and Some of Their Applications (Dover Books on Mathematics) "
- B. G. Wybourne, "Continuous Symmeties in Physics" http://www.fizyka.umk.pl/~bgw/symc.pdf
- B. G. Wybourne, "Classical Groups for Physicists" (Wiley, New York, 1974).
- https://archive.org/details/QuantumMechanics_104
- 国場敦夫: CiNii 論文 - ラプラス-ルンゲ-レンツベクトル--Gruppen Pestの始祖的例題 (特集 代数的物理観--現代物理はいかに表現されているか) 数理科学 45(7), 50-55, 2007-07 サイエンス社
- m-a-oさんのブログ水素原子の表現論
- 立川さんの講義ノートhttp://member.ipmu.jp/yuji.tachikawa/lectures/2015-qm2/
- The Reference Frame: Hydrogen atom and \(SO(4)\) symmetry
その他数学関連
- 極座標・回転群・SL(2,R) - 九州大学大学院数理学研究院
- Notes on Differential Geometry and Lie Groups. Jean Gallier and Jocelyn Quaintance.
- Gegenbauer polynomials - Wikipedia
- Zonal spherical function - Wikipedia
- Laplace operator - Wikipedia
- Laplace–Beltrami operator - Wikipedia
- Polar coordinate system - Wikipedia
- Spherical harmonics - Wikipedia
- Stone–Weierstrass theorem - Wikipedia
- Stereographic projection - Wikipedia
- 三重大山本さんの修士論文
- The Lie theory approach to special functions
- 新・フーリエ解析と関数解析学 新井 仁之 (著)
- フーリエ解析の展望 (すうがくぶっくす) 岡本 清郷 (著)
- 等質空間上の解析学―リー群論的方法による序説 (1980年) (紀伊国屋数学叢書〈19〉) 岡本 清郷 (著)
関連記事
- 超球面上の球面調和関数(その2)〜 帯球関数とゲーゲンバウアー多項式 〜 - adhara’s blog
- 超球面上の球面調和関数(その1)〜 球面調和解析 〜 - adhara’s blog
- 【一般次元】水素様原子に対するシュレディンガー方程式のフーリエ変換の導出 - adhara’s blog
- 超球面上のLaplace-Beltrami演算子と球面調和関数 - adhara’s blog
- 超球の体積/超球面の表面積とLaplacianに対するグリーン関数 - adhara’s blog
- 四次元空間におけるLaplacianの極座標表示 〜 角運動量演算子との関係 ~ - adhara’s blog